ききみみ 音楽ハンター
【さかいゆう】心にしみる一曲「君と僕の挽歌」
2016年12月26日 05:30
芸能
今回、圧巻だったのが最後にピアノの弾き語りで披露した「君と僕の挽歌」だった。当初の予定になく、久々に歌う楽曲だったため「ほんとにほんとに、いきなりです。全く練習していない」と断って始めたが、それまで大盛り上がりだった会場の空気が一変。静寂に包まれ、あちこちから鼻水をすすり上げる音が聞こえてきた。同曲は、ミュージシャンを目指しながら若くして他界した親友に向けて書かれた。その死を機に音楽を始め、親友の夢を代わりにかなえたという秘話をよく知るファンには、心にしみる1曲だ。
さかいのミュージシャンとしての価値を、緻密に計算された職人的なクリエーターぶりに見いだしがちだった私は、この弾き語りで少し考えが変わった。天に届くような力強い真っすぐさ、語りかけるような繊細さ。強弱や喜怒哀楽も自在に表現できる歌声に鳥肌が立った。シンプルな演奏で、シンガーとしての実力や存在感を今更ながら思い知ったのだった。(萩原 可奈)