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佐々木秀実“一番つらかった”思春期を救ったシャンソン

2018年01月21日 05:30

芸能

佐々木秀実“一番つらかった”思春期を救ったシャンソン
壮絶な思春期を救ったシャンソンを歌い続ける佐々木秀実 Photo By スポニチ
 佐々木秀実(37)は包容力ある歌声、曲の主人公が憑依(ひょうい)したような表現力が魅力のシャンソン歌手だ。作詞家の故阿久悠さんに見いだされ、16年前にデビュー。新曲「焦がれ星」は、佐々木の“語り”の見事さにほれ込んだ加藤登紀子が書き下ろした。Jシャンソンと称し独自の日本語曲で魅力を発信。シャンソンへの情熱は、人生で一番辛かったという思春期に生まれた。
 実家は茨城県の料亭。店を出入りする芸者の三味線や長唄などをまねた。父は後継ぎとなる長男に芸事は必要ないと反対したが、中学1年になるころ料亭は閉店し、差し押さえ。一家離散となった佐々木を、さらなる悲劇が襲った。急性喉頭腫瘍。良性だが切除してもまたできるため、「多感な13歳の1年間を病院と学校が一緒になった施設で過ごした」という。

 声帯近くに及ぶ腫瘍の切除手術に臨む数日前、医師から「多分歌は諦めなきゃいけない」と辛すぎる宣告。手術前日、母がシャンソンの女王エディット・ピアフのCDと自叙伝を持って見舞いに訪れた。「命がけで力任せに愛を叫ぶピアフの歌、本に書かれた壮絶な人生に衝撃を受けた」。家、お金、友達、家族をなくした事や同性愛者の自分、声を失う危機…そんな悩みが一瞬で吹き飛ぶほどの感動。手術後2週間の沈黙療法中もCDを聴き続けた。手術が成功して声を失わずに済んだ佐々木は、「ピアフの歌に救われた私がこの声を使って、シャンソンを広める。今もその一心で続けてます」と語った。

 今回はシリアスな過去を紹介したが実はこの人、“シャンソン界の上沼恵美子”の異名を持つ。次回はそんな明るい人柄や、高校時代の親友・高橋一生らとの秘話を届ける。(萩原 可奈)

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