ききみみ　音楽ハンター

８０２Palette中西ディレクター　手紙や日記帳でCDの付加価値アップ

2020年03月01日 05:30

芸能

　音楽界を席巻するインターネット発アーティスト特集の最終回は、ある謎に迫りたい。主戦場はデジタル世界なのに、彼らはＣＤの売り上げも凄い。なぜ？という疑問に答えてくれたのは前回に続き、ネットやアニメ音楽に特化したＦＭ８０２の番組「８０２　Ｐａｌｅｔｔｅ（エイト・オー・ツー・パレット）」（土曜深夜２・００）、通称ハチパレでディレクターを務める中西史典氏だ。

　中西氏が「私物です」と披露したのは同分野でブレーク中の「ヨルシカ」や「三月のパンタシア」の作品。どれもＣＤとは思えぬ仕様だ。「音楽がいいのは大前提の上で、他の創作物がファンを増やす要因の１つ」と中西氏は分析。例えば男女２人組・ヨルシカの第１弾アルバム「だから僕は音楽を辞めた」は全曲、架空の男性エイミーが海外を旅しながらヒロインのエルマに書く手紙がテーマ。初回限定版には歌詞カードに加え、手紙や道程で撮られた写真も封入される凝りようで「生産が追いつかないほど爆発的に売れた」という。

　第２弾アルバム「エルマ」は、エルマが手紙を頼りにエイミーの旅路をたどり各地で作った曲という設定。前作とリンクする物語を展開した。曲のドラマ性やリスナーの想像力を高める背景の構築や演出が実に緻密だ。初回盤はエルマの日記帳と写真付き。デジタルで得られないアナログな付加価値満載で、売れるのも分かる。「ネットで手軽に聴きたいライトユーザーにも、深く掘り下げたいコアなファンにも対応している」と中西氏。そのアイデアと才能には恐れ入った。

　彼らを取り上げるハチパレ人気も世界級だ。２月１日の放送中、ツイッターで「＃ハチパレ」を付けたつぶやきが急増し全国トレンド１位、世界トレンド３０位の快挙。本当にこの分野に追い風来てます！！（萩原　可奈）