高校野球の部長と監督は「作家と編集者」の関係 仙台育英・猿橋善宏部長「須江監督の言葉を広げる」

2023年09月18日 21:21

野球

高校野球の部長と監督は「作家と編集者」の関係 仙台育英・猿橋善宏部長「須江監督の言葉を広げる」
東北に勝利後、一塁側の仙台育英応援団にあいさつする猿橋善宏部長(左)と須江監督(撮影・柳内 遼平) Photo By スポニチ
 【秋季高校野球 宮城県大会2回戦   仙台育英5―2東北 ( 2023年9月18日    仙台市民 )】 今夏の甲子園で準優勝の仙台育英(宮城)が秋季県大会初戦に臨み、5―2で東北を下した。2―0の3回に4番・湯浅桜翼(おうすけ)が公式戦初本塁打の左越え3ランで追加点。負ければ来春の選抜出場が絶望的となる県大会でいきなり強豪と激突。2失策などミスも出ながら勝利し、須江航監督は「秋のミスって成長痛みたいなもの。ミスによって育っていく」と“須江節”健在だった。
 昨夏は東北勢初の甲子園大会優勝を果たし、今夏は準優勝。指揮官は新チームに「凄く楽しみ」と期待を口にした。「彼らの練習や私生活を見ていると、もしかしたら“奇跡の奇跡の奇跡の奇跡”が起こるんじゃないかと思っています」と3年連続の甲子園決勝進出を予感していた。

 黄金時代を突き進む仙台育英に欠かせない人物がいる。チームを支える猿橋善宏部長(62)は昨年4月から「ライオン軍団」に加わった。「中学軟式のカリスマ監督」が衝撃の転身だった。猿橋氏は、しらかし中時代の05年に全中準優勝を果たすなど4度の全国大会出場に導いた実績の持ち主。秀光中軟式野球部の監督だった須江監督とのつながりは深く、定年を迎える年に部長職のオファーが届いた。

 定年後は野球界、教育界を支える別の道も模索していたが、60歳からの人生を懸ける価値があると考えた。「須江先生がやっている野球スタイル、部活動の運営、理念は広がっていく価値がある。それを広げるために必要なことをやろう」。猿橋氏は監督と部長の関係を「作家と編集者」と表現する。書類作成、大会運営、選手の指導、相談役など多岐にわたる業務を通して「チームのモチベーションを維持していく。須江先生の言葉を確実に広げていく」と黒子に徹する。情報科教諭でもある須江監督は選手の成長や采配でデータを重要視。猿橋氏も「成長する、しないは数字に出てくる。“その原因はどこにある”と探る材料になる」と考えをシンクロさせる。

 チームの自慢は140キロ超の速球を投げ込む投手陣でもなく、勝負強い打撃陣でもない。長年、教育界で子どもたちを見守ってきた猿橋氏は「いまの時代、ダメな自分と真っ当に向き合うって本当に難しいこと。でもそこを超えないと1つ段階が上がらない。選手たちはよく向き合ってきた」と人間性を誇る。

 須江監督は「唯一無二だなと思った先生。ボキャブラリーがあって、子供のことを丁寧に見ている。“昔、中学にこういういい先生いたなっていう先生”だと思う。私には無いものを持っている」とその存在の大きさを表現する。

 部長就任以来、3度の甲子園出場で優勝と準優勝が1度ずつ。だが、「単なる偶然。須江先生がやってきたことが花開く時期に僕がいただけの話し」と豪快に笑う猿橋部長。来春の選抜出場に向け、新たなスタートを切ったチーム。「須江先生の仙台育英の第2幕が始まったという感じ。今までの経験を踏まえて挑戦すべきものが見えていると思う。それを全力で支えていきたいと思います」。“名編集者”が決意を新たにした。(柳内 遼平)

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