【内田雅也の追球】「やんちゃ」への期待 短期決戦こそ「平野型」選手が恋しくなる

2023年09月18日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「やんちゃ」への期待 短期決戦こそ「平野型」選手が恋しくなる
<神・D>7回、宮崎の右前打で森下は本塁へ好返球する(撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神0―1DeNA ( 2023年9月17日    甲子園 )】 阪急、近鉄を球団初優勝に導いた名将、西本幸雄が没したのは2011年11月25日夜だった。通夜は3日後、28日に行われた。斎場は西本が監督時代親しんだ西宮球場の跡地にほど近いエテルノ西宮だった。
 当日朝、夕方からの通夜の準備をしていると、喪服姿の男性が「ご焼香だけでも……」とやってきた。近鉄監督時代の教え子、平野光泰だった。

 行方不明のうわさもあったので驚いた。「大変お世話になりましたので……」と独り、棺の前で長く合掌していた。

 この日、その平野の訃報が伝わった。9日、姫路市内で亡くなっていた。74歳だった。今ごろはあの世で再会を果たしていることだろう。

 西本はよく「あいつには手を焼いた」と苦笑いし、付け加えた。「ここ一番という試合になると平野のようなやんちゃな選手が頼りになるんや」

 平野と言えば、近鉄が初のリーグ優勝を果たす1979(昭和54)年の「執念のバックホーム」が語り草になっている。前期最終戦。勝つか引き分ければ優勝、負ければV逸の南海戦(大阪)で勝ち越し走者の生還をセンターからの好返球で阻止した。80年日本シリーズでは優秀選手賞に輝いている。

 さて、すでに優勝を決めた阪神にとって、今後のテーマは1カ月後、10月18日からのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ、そして、日本シリーズをいかに勝ち抜くかである。この短期決戦こそ「平野型」選手が恋しくなる。

 この夜は投手戦。0―0均衡が続き、勝負強さが問われる展開だった。7回表2死一、二塁、代打・宮崎敏郎に右前打を浴びた。二塁走者・大和が本塁へ突入する。この時、ライトから森下翔太の好返球で失点を防いだ。ワンバウンドの矢のような送球だった。
 監督・岡田彰布も「あれなあ」と感心していた。「あの時、外野は前進守備も敷いてなかったんやで。もうええ、と言って前に寄せなかった。それで、なあ」

 西本の通夜には当時オリックス監督だった岡田も参列していた。よく一緒にゴルフもした間柄で「監督としての心得を教わった」と話していた。

 どこか型破りで、無頼派が目立った昭和のプロ野球選手とは異なり、今はまじめそうな選手が多い。岡田も「やんちゃ」への期待を高めていることだろう。=敬称略=(編集委員)

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