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東京六大学野球の「取材」を支える慶大勝野淳マネジャー 記事生む「もう1問」と「アイコンタクト」

2024年06月01日 13:45

野球

東京六大学野球の「取材」を支える慶大勝野淳マネジャー 記事生む「もう1問」と「アイコンタクト」
取材時間を管理する勝野マネジャー(撮影・柳内 遼平) Photo By スポニチ
 【東京六大学野球 次の100年へ】「学生野球の父」の飛田穂洲、「ミスタープロ野球」の長嶋茂雄、昨年には阪神を日本一に導いた岡田彰布も、1925年(大14)に始まった東京六大学野球を彩った。今年で創設から100年目を迎えた日本最古の大学野球リーグを支える人々を紹介するインタビュー連載「東京六大学野球 次の100年へ」の第5回は慶大・勝野淳マネジャー(3年)。リーグ戦では主に取材担当としてチーム、記者の調整役を担っている。(聞き手 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
 ――リーグ戦では両チームの取材を受ける選手を記者の多数決で決める「指名選手制」が採用されている。勝野マネジャーは観戦中の記者、試合中のチームをつなげる役割を担っている。

 「“取材・タイキ”と呼ばれている仕事です。“タイキ”はタイムキーパーの略で試合の時間管理をする。シートノックの時間を管理したり、試合前の整列を誘導したり、最後は審判さんを呼んで試合を開始するところまでやりますね。基本的に4年生の仕事なんですが、3年生が担当することもあります。私が担当する機会の多い“取材”は記者の希望選手をチームに伝達する仕事。試合の終盤、7、8回にネット裏の記者席に行って記者の取材したい選手をチェックします。それを六大学のマネジャーのグループラインで共有するという流れですね」

 ――取材担当として大変なことは。

 「7回くらいに試合展開が決まっていなければ終盤にバタバタすることがあります。できるだけ早くチームに取材希望選手を伝えられた方がいいので後半に“試合が動いたな”と思った時はこちらから記者に希望選手を伺うこともあります。例えば、この前(4月29日の法大戦)の渡辺憩のサヨナラホームランの試合は最後にヒーローが決まったので慌ただしくなりました。アレは憩が最後に全部持っていった(笑い)」

 ――試合後の取材ではタイムキーパーも担当していますね。

 「記者と選手の話を聞けるところは楽しいですね。大変なところはプロ野球との併用日など時間がない時の時間管理ですね。10分以内に収まるようにしています。取材が長引いてしまうとプロ野球の練習が始まってしまうので、なるべく滞りなく運営できるように意識しています」

 ――記者と選手の会話を聞いて一番印象に残ったことは。

 「今シーズンですと、立大の小畠投手の初勝利が凄く印象的でした。やっぱり初勝利というところで感情が出ていました。自分が取材場にいることで、他の大学の選手の様子を知ったり、エピソードを聞けたりすることは貴重な体験ですね」

 ――質問が途切れると取材時間が10分に達していなくても打ち切ることがある。気をつけていることは。

 「空気を読む努力をしていますね。(これ以上質問がない時は)記者の方がアイコンタクトをしてくれるので、そういうところは見逃さないようにしています。記者さんの表情を見て、空気を読んで、切るところは切るという感じですね」

 ――逆に10分を過ぎていても「もう1問だけ…」を許してくれる時もある。

 「担当する人によりますね。僕はアディショナルタイムはあまりないタイプなんですけど(笑い)。今季1回あったのは“最後の1問”が終わった後に、早大の小宮山監督が“これが最後の一問ではしまらないな…”ということで“もう1問”がありましたね(笑い)。時間厳守はもちろん意識していますが“取材の熱”も大事にしたいと思っています。試合時間など状況によりますが、取材が盛り上がっている時は“もう1問”があっても良いかなと思います」

 ――今季の慶大は優勝の可能性が消えましたが、粘り強さは健在で1年生選手の活躍も目立った。チームを内側から見ていて感じたことは。

 「1年生が活躍しやすい雰囲気を、上級生がつくれていたと思います。キャンプ期間中には実戦を凄く多くやって、これまでリーグ戦で出番が少なかった選手も試合勘を磨くことができた。清原さんもずっと4番に座り続けたことでチームの精神的支柱になりました。外丸は上級生の3年生になって、周りからのプレッシャーも上がり、去年日本一になったことで実績もついてきて他のチームからの警戒も高まった。今季は本調子ではなかったと思うんですけど、それでも試合をちゃんとつくった。彼は毎朝5時30分から体幹トレーニングをやっている。そういう姿勢だからチームも“外丸で負けたら仕方ない”という気持ちになります」

 ――いよいよ早慶戦ですね。

 「早大には優勝が懸かっているので凄い勢いでくると思う。堀井監督は常々“対抗戦”とおっしゃっていて、リーグ戦は各大学との対抗戦。最後の特別なカードだと思うので、裏方のマネジャーたちも全員で楽しみたい。慶応らしい泥臭い野球を体現してもらえたらなと思います」

 ◇勝野 淳(かつの・じゅん)2003年(平15)5月18日生まれ、千葉県千葉市出身の21歳。磯辺第3小2年から磯辺シーグルスで野球を始め、慶応義塾普通部では軟式野球部でプレー。慶応(神奈川)では俊足が武器の三塁手としてプレーし、2年からマネジャーに転身。慶大では経済学部に所属。尊敬する人は慶応野球部の森林貴彦監督、赤松衡樹部長。

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