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【内田雅也の追球】カウント0―2から四球を与えた痛恨 前川の「食らいつく」姿勢が今の阪神に欲しい

2024年06月01日 08:00

野球

【内田雅也の追球】カウント0―2から四球を与えた痛恨 前川の「食らいつく」姿勢が今の阪神に欲しい
9回1死二塁、代打・ソトはゲラ(左)から四球を選ぶ Photo By スポニチ
 【交流戦   阪神4ー5ロッテ ( 2024年5月31日    ZOZOマリン )】 見えていた連敗脱出が消え、悪夢のような敗戦が待っていた。クローザーのハビー・ゲラが同点を許し、延長戦でのサヨナラ負けである。
 激痛である。この敗戦がいかに痛いかを物語るように、阪神監督・岡田彰布は帰り際、

 「もう、ええわ」

 と言って、報道陣を遠ざけ、会見を拒んだ。

 悔やまれるのは9回裏のゲラ、延長10回裏の漆原大晟、2人とも2四球(ほかに1敬遠)が絡んでの失点だったことだ。

 とりわけ、0ボール―2ストライクと追い込んでからの四球もそれぞれ1つあった。

 9回裏のゲラは1死二塁から代打のネフタリ・ソトに0―2と追い込んだ後、高め直球の見せ球・釣り球を2球続けた。投球はあまりに高くて反応せず、低め勝負球も続けて外れて、もったいない四球を与えた。この後、四球に犠飛で同点を招くわけである。

 10回裏の漆原は2死無走者から2安打と四球で満塁を招いた。迎えた小川龍成を0―2と2球で追い込んだ後、4球連続で直球、フォークが遠く、低く外れて四球。押し出しで幕が下りた。

 ゲラも漆原も、そしてリードした坂本誠志郎も慎重に過ぎたのだろうか。ただ、かつて野村克也は「ピンチの時ほど時間をかけ、球数を使え」と教えていた。急いで勝負にいかず、誘い球を使えという意味だろう。

 その慎重さがアダになることもある。梨田昌孝は0―2から3―2(フルカウント)に至る投手心理を「狙ってボール、力んでボール、焦ってボール」と著書『戦術眼』(ベースボールマガジン社)に書いていた。2―0から狙って外してボール。2―1からは「決めよう」と力が入ってボール。2―2の平行カウントとなり、「せっかく0―2だったのに」と気が焦ってボール。0―2で投手優位だった心理が逆転してしまうわけだ。

 早く連敗脱出の勝利をと思う心理が重圧に変わっているのだろう。

 ただ、打線は9試合ぶりに4点を取った。ヒーローになりそこねたが、前川右京の活躍は明るい。プロ1号の同点2ランにバットを折られながらの右前勝ち越し打である。彼の本塁打コメントは打線復調のカギになる。「とにかく必死に食らいついて、後ろにつないでいく気持ちでした」

 今の阪神に欲しいのは、この「食らいつく」姿勢だろう。 =敬称略=
 (編集委員)

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