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【内田雅也の追球】崩壊ピンチをチャンスに

2024年06月05日 08:00

野球

【内田雅也の追球】崩壊ピンチをチャンスに
<神・楽>ベンチを出て村上(右)を迎える大山(撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 【交流戦   阪神1-3楽天 ( 2024年6月4日    甲子園 )】 敗戦後、会見を終えた阪神監督・岡田彰布に「もう策もないですね」と声をかけた。ゆっくりと歩きながら「ほんまになあ……。やりようがないわ」と吐き出した。
 大山悠輔と試合前に話し合い、2軍降格を決めて臨んだ。4番から6、7番に落としても打率はリーグ最下位の1割台に落ち込んでいた。先発を外れた大山は延長10回裏2死、次打者席で敗戦を迎えていた。

 10回表にハビー・ゲラが2点を失っていた。ゲラはこれで3試合連続失点。試合後、2軍降格が決まった。

 連覇を掲げて臨んだシーズンは54試合目で開幕前の構想が崩壊している。この夜の先発メンバーに昨年の優勝メンバーは4人しかいなかった。

 佐藤輝明やシェルドン・ノイジーは2軍暮らしが続く。貧打は極まり、岡田が理想とし、昨年実践してきたレギュラー固定での戦いなど理想論でしかない。ここ7試合続けてオーダーを替え、今や猫の目打線である。

 岡田が現役最晩年を過ごしたオリックス時代の監督・仰木彬が得意としてきたのが日替わりオーダーだった。相性やデータなどで組み替えた。

 仰木は<データに加え、私流の直感、ひらめきが入ります><直感はこれまでの野球人生のなかで経験したことの集積です。独特の感覚、嗅覚と言えるかもしれません>と著書『勝てるには理由がある。』(集英社)に記していた。

 岡田も経験を基に、感覚を研ぎ澄まし、においをかいでいたはずだ。それでも貧打は相変わらずだった。そして「やりようがない」という泥沼にはまり込んでいる。

 試合は防戦一方だった。3連敗中だった先発・村上頌樹の捕手に坂本誠志郎ではなく初めて梅野隆太郎を起用。6回1失点と踏ん張った。4回を除き毎回走者、5回以降毎回得点圏に走者を背負い、再三の好守で均衡を保っていた。日本一チームがパ・リーグBクラスに圧倒されていた。

 どん底の状態だが、仰木は「逆境にこそチャンスあり」とよく語っていた。進学塾の人気講師だった木下晴弘の『涙の数だけ大きくなれる』(フォレスト出版)に<逃げればピンチ。挑めばチャンス>とある。<挑むことによって磁場が変わり、力を引き寄せる>。

 岡田もチームも前を向かねばならない。崩壊したのであれば再建するまでである。 =敬称略= (編集委員)

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