キダ・タローさんという作曲家 作詞家に「主人公の名前は?」細かくイメージ、依頼主の立場で作る

2024年05月16日 20:00

芸能

キダ・タローさんという作曲家 作詞家に「主人公の名前は?」細かくイメージ、依頼主の立場で作る
「兵衛向陽閣」のレコーディングに臨んだ際のキダ・タローさん(右)と、もず唱平(2018年) Photo By スポニチ
 数々の名曲を生み、「浪花のモーツァルト」と親しまれた作曲家キダ・タローさんが14日、93歳で亡くなった。
 生涯作曲数は本人も把握しておらず、5000曲とも言われる。「傍観者でなく当事者の気持ちになると馬力も出る」。依頼主の立場に立った曲作りが信条だった。

 歌謡曲、CM、校歌まで数々の楽曲を共作した作詞家・もず唱平氏(85)は、キダさんの人柄を「普段は小さいことを気にしない…磊落(らいらく)な人だった」と語るが、こと作曲になると「チェックが多く、細かいところまで気の利く人でした」と振り返った。

 あまたの作曲家と仕事をしてきたもず氏が、後にも先にも「そんなこと聞いてきたのはキダさんだけ」と語る驚きの逸話がある。

 歌詞を渡した後、キダさんから「この主人公の名前は?」と聞かれた。当然名前など設定しておらず、とっさに思いついた適当な名前を答えたというが、その後も「住んでる所は?職業は?」と問うてきた。「ユーモアあふれる楽曲の裏で、真剣に真面目に考える。具体的にイメージを描けないと曲作りしない人なんですよね」と評した。

 また、単語のイントネーションに沿ったメロディーを付けることも心がけていたキダさん。もず氏は「標準語には標準語に合うメロディー、大阪弁には大阪弁に合うメロディー。言葉が自然に聞こえ、歌詞がよく伝わる。作詞家からすれば大変信頼できる作曲家でした。でも、そういう人はなかなかいないんです」ともず氏。詞の世界観はもちろん、言葉のひとつひとつまで大切にしてくれる貴重な作曲家だった。

 10代にジャズ喫茶でピアノ奏者としてプロのキャリアをスタートさせたキダさん。その音楽はキャッチーで日本的な親しみやすさの中に、西洋のモダンさものぞく。もず氏は「ジャズを基盤とした洋楽要素が音楽に盛り込まれていて、僕の知らない音楽シーンを(曲から)間接的に教わった」と感謝した。

 「浪花のモーツァルト」ながら生前、スポニチの取材に「モーツァルトよりショパンのほうが好きやねん。繊細で情熱的、ロマンチックやんか」と語っていた。その言葉通り、キダさんも繊細な心配りと情熱をもって、歌詞の印象も残す名メロディーを誕生させていた。 

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