こだわり旬の旅
【福井】吉永小百合CMで話題「日本一複雑な屋根」の神社とは…越前和紙のふるさとを訪ねて
2024年11月02日 15:00
社会
地元ガイドによると、江戸後期の1843年(天保14)に再建された社殿は、永平寺勅使門を手掛けた棟梁、大久保勘左衛門によるもので、本殿と拝殿が一体になっており、2つの神社で共有。檜皮葺(ひわだぶき)の屋根は入り母屋造りに千鳥破風と唐破風、さらに入り母屋造りに唐破風が重なる構造。全国でも類を見ない建築物といい、国の重要文化財だ。
背後の大徳山(標高326メートル)の上の奥の院には両社別々の社殿があり、里宮で一体化した理由は定かでないが、古来、両社には深い関係がある。岡太神社は約1500年前、村人に紙のすき方を教えた川上御前を祭ったのが始まり。大瀧神社は719年、僧侶の泰澄(たいちょう)が、その川上御前を守護神として神仏習合の社を創建したのが起こり。現在、岡太神社は大瀧神社の摂社(本社に付属し、その祭神と縁故の深い神を祭った神社)に位置づけられているという。
2社を繋ぐ“紙の神様”川上御前。その技術は現代まで伝わり、今立五箇地区には今でも日本三大和紙の一つといわれる越前和紙の製紙所が60カ所以上集積。その中心にあるのが、2社から歩いて約15分の「越前和紙の里」だ。伝統の技と美しい自然に触れる散歩道沿いには、紙の博物館や美術館などが点在。その中の「卯立(うだつ)の工芸館」で職人の紙すきを見学した。
江戸中期に紙すきを生業としていた西野平右衛門家を移築、改修したもので、玄関正面に卯立を立ち上げた「妻入り卯立」の建築様式が目につく。1階には古式にのっとった越前和紙の紙すきの道具と場所を復元。そこで女性伝統工芸士が紙の原料のコウゾの白皮を煮る釜場から紙すき、乾燥までを見せてくれたが、コウゾの皮に残る黒皮などの不純物を取り除くちりよりや、約0・2ミリの厚さにする紙すきなど、まさに神業。川上御前が降臨したようだった。
▽行かれる方へ 工芸館の入館料は紙の文化博物館と共通で300円。本格的な「流しすき」体験ができ2時間で1万1000円。近くのパピルス館(入館無料)では普通の紙すき体験ができ、はがき2枚600円から。北陸DCは12月末まで。問い合わせは岡太神社社務所=(電)0778(42)1151、卯立の工芸館=(電)同(43)7800、福井県観光連盟=(電)0776(23)3715。