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差別主義者が排除される時代――米殿堂“現実に向き合う”改革期待

2020年12月27日 05:30

野球

 コロナ禍でズタズタにされた今年の大リーグだが、苦難のシーズンで改革にはずみがついたのが米殿堂博物館だ。殿堂入りした選手、球界関係者を“聖人”扱い、人種差別主義者に目をつぶった「過去の見直しを始めた」とニューヨーク・タイムズ紙は伝える。
 改革の背中を押したのがシーズン中に警察官の黒人への過剰暴力に反発して発生した「ブラック・ライブズ・マター=黒人の命も大事だ」運動だ。例えば初代コミッショナーのケネソー・マウンテン・ランディス。「卓越した指導力と統制力」を称えられたが、黒人排除も徹底的。全米規模で南北戦争での南軍(奴隷制維持)の将軍たちの銅像が撤去され、球界でも人種差別のオーナー像(ツインズ)撤去や功績を称えて道路に付けたオーナーの名(レッドソックス)を変更する動きが広がる。今季のアメリカン、ナショナル両リーグのMVPに贈られたトロフィーからは初代コミッショナー名が外された。殿堂もランディスの顕彰額を殿堂ホールの壁から外すのか。

 殿堂は「それはしない」。差別主義者を記者たちが選んだ時代背景などを詳しく解説するパネルをホール入り口に設けるという。だが、殿堂には顕彰額を作り直した例がある。ジャッキー・ロビンソンの顕彰額に初の黒人大リーガーとして「人種差別反対で果たした大役」を落とし、08年に新しく作り直した。すでに数人の差別主義者の名が明らかに。いずれ新しい顕彰額に交換されることだろう。

 「栄光のあとに汚点が暴かれる。悲しいことだが、暗い側面を持つのが人間だ」と02年に殿堂入りの名遊撃手、“オズの魔法使い”オジー・スミス氏。神話は終わり、リアルな現実に向き合う殿堂に期待する。(野次馬)

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