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予想外のヒット作「フィールド・オブ・ドリームス」を利用したMLB

2021年08月15日 05:30

野球

予想外のヒット作「フィールド・オブ・ドリームス」を利用したMLB
米大リーグのホワイトソックス戦で、本塁打のボールが飛び込んだトウモロコシ畑の方を見るヤンキースのジャッジ(AP) Photo By AP
 トウモロコシ畑の球場で89年公開の映画「フィールド・オブ・ドリームス」の名を冠した試合、ホワイトソックス対ヤンキース戦は、ホ軍が逆転サヨナラ2ランで勝利した。試合の余談を少しばかり。
 企画はMLB(大リーグ機構)、スポンサーは大手保険会社。若者の野球離れに対応し、毎年続ける球団を持たない都市で行う野球PRの一環だ。今回の試合の冠のケビン・コスナー主演映画は、農民一家の家族愛、絆、信念をうたい上げ、野球選手だった亡き父との和解を果たすファンタジー作品。和解は大リーグ史の悲劇、1919年のホ軍のワールドシリーズ八百長事件で追放された8選手を「建てよ。彼らはくる」との神の声に導かれてトウモロコシ畑に球場をつくり「よみがえらせ」て果たされる。球史の実在人物が登場するが、野球オタク作家の原作で、一般の観客には分かりにくい。歴史的スーパースターで「無罪」で追放された左打ちのシューレス(はだしの)ジョー・ジャクソンを右打ちにしたのが名作の欠点だ。

 完成した作品は緑のトウモロコシ畑の圧倒的な美しさと現在と過去を自在に語り、批評家は激賞した。しかし映画会社は「アクションもセックスもない。商売にならん」と、公開当初の上映館は全米で4館、それが口コミで1800館上映の大ヒット、主題の家族愛に感動した観客がつくった名作をMLBが利用した。

 コスナーに会ったことがある。いつの日米野球だったか、東京ドームの練習をのぞくとジーンズ、Tシャツ姿でベンチに座っていた。小声で名を確認し、あなたのベスト野球映画は「さよならゲーム」というと喜んだ。「脚本・監督は元オリオールズのマイナー選手だ」。野球と西部劇で30分ほど話し、デスクに報告。「短信で15行」の返事で特ダネ空振りになった。(野次馬)

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