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「名物審判」の引退と、迫るロボット化の波

2022年02月13日 05:30

野球

 ジョー・ウエスト審判員(69)の引退が先週、大リーグ機構(MLB)から発表された。昨年末の本人の辞意表明と同時に「ジョー・ウエストの殿堂入りを防止する会」と名乗る“お遊び”の会がネット上に誕生したが、人気のほどが分かる。大リーグ史上最長通算43シーズンの審判生活、最多レギュラーシーズン5460試合の判定で殿堂入りは確実だ。
 ウエスト氏は「名審判」より「名物審判」と呼ぶ方がふさわしい。力士並みの巨漢で直情径行の正義派。選手乱闘の渦中に飛び込み選手をはね飛ばして仲裁し「今後、選手の体には絶対に触れないこと」とMLBからの処分。一方でウエスタンソングを作詞・作曲・CD発売、ファンは「カウボーイ・ジョー」と呼んで親しんだ。ベスト挿話は、審判員年俸闘争のリーダー役を果たしたときだ。ウエスト氏は審判員たちの辞表を預かり、MLBに提出した。ストを避け穏便な辞任策を選んだが、MLBは全員の辞表を受理し、審判員の高まる不安を見極めてからウエスト氏を除く全員と再契約。カウボーイ・ジョーは2年間干されたが、泣き言は言わなかった。

 19年からMLBは「審判員不要」とばかりMLB傘下の3A、アトランティック・リーグの8球団で実験野球を続ける。ニューヨーク・タイムズ紙によると、「一塁盗塁もあり」で、ロボット審判導入は今季から始まるという。マンフレッド・コミッショナーは「選手は問題なくやっている」というが、実情は「俺たちは実験室のハツカネズミ。辞めて日本か韓国でまともな野球をやって帰国、まともなマイナーに入り大リーグを目指したい」と言っているとタイムズ紙。カウボーイ・ジョーの引退は審判員を球界の絶滅危惧種に追い込む時期の到来と思えて、気にかかるのだ。(野次馬)

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