【王将戦】藤井王将 “史上最長”長考160分 午前42手から一転、午後わずか9手 静かなヤマ場
2024年01月21日 05:25
芸能
「陣形整備がある程度終わり、ここからどう戦っていくかです」
休憩中の取材に藤井が語った。勝てば連勝発進となり、シリーズの流れを引き寄せられる第2局。慎重に方針を定めるために費やした長考だったのだろう。穴熊をさらに銀冠穴熊まで発展させる選択肢もあったが、8冠の判断は違った。
陶板ハンバーグを味わった休憩明け。計1時間40分考慮して▲7五歩(第1図)を決断した。菅井のダイヤモンド美濃を上回る穴熊の堅陣を頼りに、踏み込んだ。
1時間の休憩中もその後の展開を考えれば、実質2時間40分。藤井には一昨年、第71期7番勝負第2局で2時間28分の自己最長考慮があるが、休憩中を含めばそれ以上考えたことになる。
19日の対局場検分。後手で先勝した第1局を振り返り「中盤の難しい将棋で見通しを立てて進めることができなかった」と考慮時間の配分を反省した。70手目時点で残り44分の自身に対し、菅井は2時間3分あったためだ。同時に「先手番なので一手一手考えて積極的に指せれば」。その▲7五歩。角の頭上にある歩は通常突きにくいが、有言実行の開戦となった。
上峰対局は今回5局目。過去4局は勝率上、若干有利な先手が敗れてきた。加えて藤井にとって不穏な空気が漂ったのが対局開始前。白い羽織の留め具が壊れていた。
対局室に到着後、スーツから和服へ着替えて気づき、関係者に伝えた。休憩時、数珠状になっている留め具の内部を走る、ひもの破損を修理。午後の対局からは羽織を着用できた。「直してもらえて助かりました」。盤外の不安を消し去り、笑顔を見せた。
「▲7五歩から全面対決に入りました。菅井八段も強気に応対しています。藤井王将がどう歩得を生かすか、明日は激しくなります」。副立会の糸谷哲郎八段(35)が解説した。封じ手開封から、1日目とは一変の戦闘再開となる。
≪封じ手は?≫
▼立会人小林健二九段 ▲4六角。6四にいる角は後々、追われることになるため先に引いて、5七桂成に対応。
▼副立会人糸谷哲郎八段 ▲4六角。落ち着いた受けの手。2日目は激しい攻め合いを予想。
▼森本才跳四段 ▲4六角。角を引いて、ゆっくりすれば歩得が大きいのでは。
≪午後のおやつに“いちごさん”≫藤井は午前のおやつに「“いちごさん”のムース」とアイスコーヒーを注文した。“いちごさん”のムースは昨年、同所で行われた王将戦第6局1日目の午前のおやつで食べており、同じシチュエーションで2年連続のオーダー。22年の祝賀会で訪れた際にも食べており“3年連続”とお気に入りの様子だ。甘さとみずみずしい果汁が特長の佐賀県のブランドいちご「いちごさん」をふんだんに使用し、「王将」の駒に見立てたクッキーも添えられた。ムースは砂糖控えめで、いちごの甘みを味わえるように工夫されている。
≪18年考案チーズケーキも≫藤井は昼食に、大幸園提供の「陶板ハンバーグ」を食べた。牛肉と豚肉の合いびきでハンバーグに加えジャポネソースにも佐賀県白石町のタマネギが使用された。午後のおやつには「ベイクドチーズケーキ」とアイスレモンティーをオーダー。ベイクドチーズケーキは、同所で初めて王将戦が開催された2018年の第67期王将戦に合わせて考案された一品。