「虎に翼」寅子絶望と再起“神週”焼き鳥店主ら市井の人にも焦点 演出語る裏側“崔さん週”担当の異色経歴

2024年06月02日 17:00

芸能

「虎に翼」寅子絶望と再起“神週”焼き鳥店主ら市井の人にも焦点 演出語る裏側“崔さん週”担当の異色経歴
連続テレビ小説「虎に翼」第44話。闇市で焼き鳥を出された佐田寅子(伊藤沙莉)だったが…(C)NHK Photo By スポニチ
 【「虎に翼」第9週演出・安藤大佑監督インタビュー 】 女優の伊藤沙莉(30)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「虎に翼」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は5月27~31日に放送された第9週「男は度胸、女は愛嬌?」が序盤のヤマ場。人生のどん底に落ちた主人公・佐田寅子が日本国憲法公布を知って再生、裁判官を目指すターニングポイントとなった。インターネット上でも“神回”ならぬ“神週”と話題に。演出を担当した安藤大佑監督に撮影の舞台裏を聞いた。
 <※以下、ネタバレ有>

 向田邦子賞に輝いたNHKよるドラ「恋せぬふたり」などの吉田恵里香氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算110作目。日本初の女性弁護士・判事・裁判所所長となった三淵嘉子氏をモデルに、法曹の世界に飛び込む日本初の女性・猪爪寅子(ともこ)の人生を描く。吉田氏は初の朝ドラ脚本。伊藤は2017年度前期「ひよっこ」以来2回目の朝ドラ出演、初主演となる。

 戦時下、子どもを授かった寅子は弁護士の道をあきらめ、夫・優三(仲野太賀)は戦病死、兄・直道(上川周作)は戦死。終戦から1年、父・直言(岡部たかし)も病死。生涯を懸けた夢と最愛の家族を次々に失い、絶望の淵に沈んだ。

 しかし、河原で食べた焼き鳥の包み紙になっていた新聞紙に「日本国憲法」の文字を発見。新憲法に希望を見いだし「私の幸せは、私の力で稼ぐこと。自分がずっと学んできた法律の世界で」と再起。裁判官として採用してほしいと、桂場(松山ケンイチ)の門を叩いた。初回(4月1日)につながる“伏線回収”がSNS上で反響を呼んだ。

 主人公のモデル・三淵嘉子の長弟・一郎は1944年(昭和19年)に戦死。嘉子と結婚した書生・和田芳夫は1946年(昭和21年)、戦地から帰国後に長崎の陸軍病院で亡くなり、翌1947年(昭和22年)には父・武藤貞雄も他界(敬称略)。史実ベースの展開となり、安藤監督は「肉親を相次いで失う壮絶な体験を乗り越えて、裁判官の道を歩んだ三淵さん。覚悟はしていましたが、第9週の台本は非常に重い1冊に感じました。一方で、第9週の最後は寅子が人生のどん底から立ち上がり、初回に戻りつつ、アメリカ通の裁判官・久藤(沢村一樹)らと新しく出会う第10週に向かうので、彼女の再生や希望を描くためにも、とことん絶望と向き合う必要がありました」と週全体をプラン。「重要な週を任されたプレッシャーもありつつ、意気に感じました」と明かした。

 戦後、焼け跡の町にいる市井の人たちは「寅子に焼き鳥を渡す女性をはじめ、役名がなくても、画面に映るのが一瞬でも、それぞれに人生があって、戦火をくぐり抜けてきた背景がにじみ出るようにしたいと心掛けました。チーフ演出の梛川(善郎)さんが第1週でこだわっていた部分で、僕も感銘を受けたので、踏襲したいな、と。エキストラの皆さんのお芝居づけやキャスティングにも力を入れました」。腐心は細部にまで行き届いた。

 安藤監督は東京外国語大学で朝鮮語を専攻。NHK入局前の04年に韓国留学し、助監督や通訳などスタッフとして韓国映画の製作に携わった異色の経歴の持ち主。その専門性を買われ、寅子の同級生・崔香淑のバックボーンが描かれた第6週「女の一念、岩をも通す?」(5月6~10日)を担当。演じる韓国出身の女優ハ・ヨンスの日本語トレーニングや時代背景のリサーチなども受け持った。

 演出の道に進むきっかけの1つは、特撮映画「ゴジラ」(84年)から「ゴジラVSデストロイア」(95年)の平成ゴジラシリーズ。「もともと映像作りには興味があって。『ゴジラ』はメイキングを見るのも好きで、もの作りの現場に憧れていました。その後は外国語を学んだので、少し違う視点を持って、社会的なテーマも描く韓国映画の凄さも吸収しながら、自分のやりたいことを模索していった感じです」とNHK入局までを振り返った。

 共亜事件を描いた第5週「朝雨は女の腕まくり?」(4月29日~5月3日)には特撮ドラマ「ウルトラセブン」(67~68年)の主人公モロボシ・ダン役を演じた俳優・森次晃嗣とアマギ隊員役を演じた俳優・古谷敏が登場したが、実は安藤監督による配役。「お二人が並んだ時は最高でしたね(笑)。ただ、ミーハーな気持ちでキャスティングしたわけではなくて、昭和の大きな疑獄事件を描く時に、正義のパブリックイメージがあるお二人に黒幕的な存在(森次は貴族院議員・水沼役、古谷は商工大臣の若島)を演じていただくのは効果的だなと思ってお願いしました」と狙いを説明した。

 吉田氏の作劇、キャストの熱演とともに、安藤監督の手腕も光った第9週。今後の担当週も注目したい。

 ◇安藤 大佑(あんどう・だいすけ)2008年、NHK入局。最初の赴任地は佐賀局。12年からドラマ部。大河ドラマ4作目となった22年「鎌倉殿の13人」は“神回”の1つ、第45回「八幡宮の階段」など全6話を担当。朝ドラに携わるのは16年「とと姉ちゃん」(助監督、第21週演出)以来2作目で、今回はセカンド演出を務める。ここまでは第5週「朝雨は女の腕まくり?」、第6週「女の一念、岩をも通す?」、第9週「男は度胸、女は愛嬌?」を担当。

おすすめテーマ

2024年06月02日のニュース

特集

芸能のランキング

【楽天】オススメアイテム