自分が走るとしたら何区?【箱根駅伝】全10区(コース)の特徴

2024年01月02日 09:00

自分が走るとしたら何区?【箱根駅伝】全10区(コース)の特徴
お正月といえば箱根駅伝。家でテレビ観戦するのを恒例としている人も多いのではないでしょうか。 10人のランナーが襷(たすき)をつなぐ東京大手町~箱根間の往復217.1㎞。その全10区のコースにはそれぞれどのような走りをする […]

お正月といえば箱根駅伝。家でテレビ観戦するのを恒例としている人も多いのではないでしょうか。

10人のランナーが襷(たすき)をつなぐ東京大手町~箱根間の往復217.1㎞。その全10区のコースにはそれぞれどのような走りをするランナーが向いているのか、Japanマラソンクラブ完走請負人・牧野仁さんにお話を伺いました。

牧野仁

集団走からはじまる往路。ガマン強さも必要

1区:大手町~鶴見 21.3km

前半は平坦でまっすぐな道で、例年、集団走がしばらく続く。後半の立体交差や橋のアップダウンでの走りが勝負のポイント。この日のレースの流れを決める重要な区間であり、各校の戦略により慎重な駆け引きが行われる。

牧野さんの解説:
トップを走る選手に離されたとしても見える位置でついていくとか、いや無理についていかないほうがいいとか、いろんな戦略を立てなければならないのが1区です。自分の思うペースで行くことが許されない場合もある。熱い気持ちはありつつも、冷静になれる人に向いています。

2区:鶴見~戸塚 23.1km

各校のエースが集結する区間。『花の2区』と呼ばれる。距離が長く、中盤に最大の難所といわれている権太坂を上り、さらにラスト1㎞に厳しい上りが待ち受ける。2区でどの選手が出てくるかが往路序盤の見どころである。

牧野さんの解説:
2区で主導権がとれれば、往路優勝する可能性が非常に高くなる。できればここで差をつけておきたいわけです。ただ直線で速ければいいのではなく、さらにアップダウンにも対応できる本当の実力者でないと、2区を勝つことは難しいです。もともとのポテンシャルの高い、オールラウンダーの選手に任せたい区間です。

3区:戸塚~平塚 21.4km

上り坂の途中で襷を受け取り、上りきった後しばらく緩やかな下りが続く。10㎞を過ぎると海沿いの平坦な道となり、18㎞付近の湘南大橋からは富士山が眺められる。2区からの流れを維持または修正するのが3区の重要な役割である。

牧野さんの解説:
海の近くは向かい風が強く、正面から日差しがまっすぐ入ってくるので、かなり体力が奪われます。風をどう受けるか、気温がどうなっているか。遮るものがないときには寒さ、暑さ、風といろんな要素が入ってくるので、天候状態が気になるのが3区ですね。平坦なコースをコツコツ走れる人に向いています。

4区:平塚~小田原 20.9km

テレビ映像では平坦な道がずっと続いているようにみえるが、細かなアップダウンが地味に続く。時間的に日中になるので天候によっては気温が上がることも。5区の山上りに備えタイムをかせぎ、いい位置で襷をつなぎたい。

牧野さんの解説:
4区になると選手もだいぶばらけてきますので、どちらかというと集団よりも一人で走るのが強い選手を置きたいですね。4区は景色が変わらないので、淡々とまっすぐな道を走るのが好きな人に向いている区間です。3区もそうですが、4区も一人で我慢強く走れることが必要になります。

5区:小田原~箱根・芦ノ湖 20.8km

高低差800m以上を一気に駆け上がる山上りは箱根駅伝最大の見どころ。16㎞付近の最高地点を過ぎるとそこから3㎞ほどは一転して下りとなる。どの選手が強いか走ってみないとわからない、予想のつかない難コースである。

牧野さんの解説:
走り方で向き不向きが大きいのが5区。地面を蹴りすぎる人は上りに向いてないです。地面に足を置いていく走り方の人、もしくは地面の力使って次の足が出てくる人、膝が前に出てくる人が向いています。最高地点まで上りきって、その後少し下って最後は平坦になる。ここで走りがうまく切り替えられるかがポイントです。

たくさんのドラマが生まれる復路。粘り強さが武器になる

牧野仁

6区:箱根・芦ノ湖~小田原 20.8km

5区の「山上り」に対して、6区は「山下り」。最初の4㎞ほどは上りだが、その後一気に下る。ペース配分が難しく、さらに急カーブでの切り替えしも必要で、足への負担が非常に大きい。下りきってから中継所までの3㎞で足が出なくなってしまう選手も。

牧野さんの解説:
少し上ってから下りになるので、まずそこで切り替えが必要です。山下りでは、きつい傾斜を一気に下った後に傾斜が緩くなると、上り坂に感じるほど足が出なくなります。体が山側に倒れるとスピードを殺してしまうので、しゃがんでいるような姿勢で谷側に体重をのせて、足が前へ前へ出る走りができる人はどんどん先に行けます。

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7区:小田原~平塚 21.3km

スタート時は箱根の山から吹く冷たい風で冷え込み、太陽が高くなるにつれ気温が上がってくるので、寒暖差が大きく、体がうまく対応できないと大ブレーキがかかってしまうことも。ペースを整え、往路のタイム差を縮めておきたい区間である。

牧野さんの解説:
平坦に感じますが細かなアップダウンがあって、全体的には下り基調。前半自重できて足に余力を残せる人は、後半強いですよ。最初はゆっくり入って後半とばすことができる。前半とばしすぎて後半ガクッとくるケースは毎回見られます。裏の4区もそうですが、7区も我慢強さが求められますね。

8区:平塚~戸塚 21.4km

3区と逆で8区は追い風を受けることが多い。後ろからの風と日差しに体力を奪われることで、後半の失速につながることも。優勝争いやシード権争いが次第に見えてくるので、ここでライバルを引き離しておきたい。

牧野さんの解説:
戸塚に向かって上り基調になるので、8区はきついんです。ここも、一人で走って、コツコツ上って、後半にいかに強い走りでスパートできるかが勝負になってきますね。スピードがあるというよりは、スピードが落ちない選手が向いています。

9区:戸塚~鶴見 23.1km

「花の2区」の裏で、復路のエースが配される。襷を受けて、いきなりの下り坂。その後の距離が長く起伏も多いので、冷静な走りが必要。優勝争い、シード権争い、鶴見中継所での繰り上げスタート回避のためのタイムとの闘いと、箱根駅伝ならではのドラマが数多く見られる区間である。

牧野さんの解説:
トップを走るチームは、9区をしっかりと走ることができれば優勝は確定です。それを追うチームはここで離されると、逆転優勝は厳しい。9区の選手がどういう戦い方ができるかが非常に重要なんです。「復路の花」ですからね。充分な走力を持っていて冷静にペース配分ができる人に走ってもらいたいです。

10区:鶴見~大手町 23.0km

逃げ切るか、大逆転か。優勝争いはもちろん、シード権をめぐる闘いも見どころの最終区間。都心を進むにつれ、気温の上昇、ビル風の影響を受けることになる。道の起伏や天候だけでなく、チームのみんながここまでつないできた襷の重さも選手の士気につながっている。

牧野さんの解説:
アンカーは最後まで粘り強く走れるランナーがいいですね。でもこれはチームの事情がありますよね。往路でのタイム差によって復路の作戦を変えてくるでしょうから。たとえば、トップで逃げ切ろうとしているのか、それを追って逆転を狙うチームなのか、シード権争いに絡んでくるチームなのか。そういった意味で監督の采配に注目するのもおもしろいですよ。

道路を走る選手

各区間の特徴を確認しつつ「自分が走るとしたら何区だろう?」「自分がここを走ったらどんな走りができるだろう?」と選手の気持ちになって観戦しているうちに、お正月から自分も走りたくなってうずうずしてしまうかもしれませんね! その勢いで新年初ランへGO!

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牧野仁[監修者プロフィール]
牧野仁(まきの・ひとし)
有限会社スポーツネットワークサービス代表、Japanマラソンクラブ完走請負人。1967年東京生まれ。アスレティックトレーナー、ストレングス&コンディショニングトレーナーとして活躍。健康ジョギングからマラソン完走、レベルアップまであらゆるランニングの指導を全国各地で展開している

<Text & Photo:アート・サプライ>

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