市西宮、「知」と「和」で6年ぶり8強 事前研究で好投手攻略 大黒柱なくとも一丸

2023年07月21日 17:01

野球

市西宮、「知」と「和」で6年ぶり8強 事前研究で好投手攻略 大黒柱なくとも一丸
サヨナラでのコールド勝ちにベンチを飛び出す市西宮の選手たち Photo By スポニチ
 【第105回全国高校野球選手権兵庫大会5回戦   市西宮9―2須磨翔風 ( 2023年7月21日    尼崎・ベイコム野球場 )】 市西宮1回裏無死一、三塁、打席の3番・生末磨宏(3年)は直球が続いて2ボール―1ストライクとなり、狙いを変化球に定めた。
 「3球続けて同じ球種はない、と読んでいました」。選手全員でビデオを観て研究、須磨翔風の本格派右腕、槙野遙斗(2年)の投球傾向をつかんでいた。直球以外ならカーブかスライダーだ。内角に抜けてきたスライダーに反応、三遊間突破の左前先制打となった。

 2死後、下田弘太(3年)も読んでいた。1ボール―2ストライクと追い込まれ「変化球で追い込み真っすぐ勝負が多いと頭に入れていた」。だから内角速球にも詰まらず左中間にライナーで弾き返せた。2点三塁打。鮮やかな速攻だった。

 好投手相手に、知力をしぼって練った対策が初回から奏功していた。

 加えて光ったのは機動力、小技だった。1回裏無死一塁で岡田万册(3年)は送りバントがファウルになると、バスターエンドランに切り換え、右翼線安打で好機を広げた。「右方向に打って一、三塁にしようと思っていた」と高め速球を合わせ、狙い通り快打した。

 2回裏も1死一、三塁から投手右へ絶妙のセーフティースクイズを決めた。4回戦・龍野戦でも同じ一、三塁でセーフティースクイズを決めている。「練習試合で何度もやっているので、その場で出るサインが分かる」と吉田俊介監督と意思が通じていた。2番打者として全4試合で計5個の犠打を決めている。

 8回裏2死一、三塁、主将の4番・小野颯真(3年)がライナーで左翼頭上を破り、7点差コールドのサヨナラ勝利となった。「チャンスで打てていなかったので自分で決めたかった。“打てる”と言うか“打つ”という気持ちでいきました」

 弱いとされていた打線が3試合連続2桁安打。4試合で計51安打、27点をあげている。好調な打線に「練習試合でもなかった」と選手たちは口をそろえ、驚くほどだ。

 小野は「追い込まれても何とか食らいつく。クリーンヒットじゃなくても粘り強くいく姿勢が結果に出ている」と話す。この日放った16長短打のうち、2ストライク後の安打が7本もあった。

 今春に続くベスト8進出。夏に限れば、2017年以来6年ぶりだ。当時は山本拓実(現日本ハム)という快速球右腕の大黒柱がいた。

 後半3回を1安打零封で締めた右腕・南光悟(2年)は昨年12月に母校グラウンドを訪れ、マウンドから投球練習した山本の姿を覚えている。「すごい球でした。何か言われたわけではありませんが、感じるものはありました」。ブルペンには山本が寄贈した屋根がついている。「偉大な先輩が確かにここにいたんだと実感しながら練習しています」

 吉田監督は「今年は継投の投手陣ですから」と「陣」に力を込めて言った。「6年前と変わらない点もある。チームワークと言いますか、全員で勝ちに行く精神ですね」

 部員たち自身で決めたスローガンは「和――勝利への執念」。快進撃に吉田監督も「本当に一戦一戦強くなっている。驚くほどの成長です」と勢いに乗っていた。(内田 雅也)

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