「ふてほど」番組P語る盟友クドカンの“覚悟”「社会風刺が強めに」なぜ中年+タイムスリップ?企画の裏側

2024年03月10日 11:30

芸能

「ふてほど」番組P語る盟友クドカンの“覚悟”「社会風刺が強めに」なぜ中年+タイムスリップ?企画の裏側
金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」第7話。羽村由貴(ファーストサマーウイカ)に促され、小川市郎(阿部サダヲ)はエゴサーチをし…(C)TBS Photo By 提供写真
 脚本家・宮藤官九郎氏(53)の最新作、TBS金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」(金曜後10・00)が1月クール最大の話題作となった。今月1日放送の第6話から後半戦に突入。宮藤氏と長年、黄金タッグを組む磯山晶プロデューサー(TBSスパークル)に盟友の魅力や凄さ、企画誕生や作劇の舞台裏を聞いた。
 <※以下、ネタバレ有>

 宮藤氏がオリジナル脚本を手掛け、俳優の阿部サダヲが主演を務めるヒューマンコメディー。「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツアイ」の宮藤氏&阿部&磯山氏が「タイガー&ドラゴン」以来19年ぶりにタッグを組んだ。主人公は1986年(昭和61年)から2024年(令和6年)にタイムスリップしてしまった“昭和のダメおやじ”体育教師の小川市郎。彼の“不適切”な言動がコンプライアンスで縛られた令和の人々に考えるヒントを与える。

 毎回、昭和と令和のギャップなどを小ネタにして爆笑を誘いながら、「多様性」「働き方改革」「セクハラ」「既読スルー」「ルッキズム」などの社会的なテーマをミュージカルシーンに昇華。コンプライアンス社会に一石を投じる宮藤氏の意欲的な筆が冴え渡り、SNS上で大反響を呼んでいる。

 今回の企画は「中年が頑張る姿」を描きたいと思ったのが発端。磯山氏は「自分がスタッフ内で最年長近くになって、興味としても恋愛・両思い・結婚?と展開されるような恋愛ドラマには熱くなりにくいと感じていて。かといって『半沢直樹』(TBS)に代表されるようなリアルな企業ものは得意じゃないので、フィクション性の高い内容で中年が頑張る姿を明るく描けば、視聴者の皆さんに応援していただけるんじゃないか、そして、自分も主人公に鼓舞されたいと思いました」と述懐。

 宮藤氏との今作のやり取りは22年秋から徐々に進み「中年男性が走り回っているイメージがいいですよね、と。『毎度おさわがせします』(TBS)のようなケンカばかりしているけど仲の良い親子はどうか、という案もありましたが、単に『あの頃(昭和)はよかったね』とノスタルジーに浸るだけのドラマなら、今作る必要性はあまりないので、タイムスリップの設定を盛り込むことになりました。同時にキャスティングの話になって主役は阿部さんにお願いしたい、阿部さんのタイムスリップものなら絶対面白くなると、打ち合わせが盛り上がりまして(笑)。阿部さんが演じた『いだてん』のまーちゃん(※1)が大好きなんですが、あのまーちゃんが令和に来たらどうなるか、みたいな話はどうかと。タイムスリップを使えば、中年男性を主人公にする意味も深くなりますし」と明かした。

 宮藤氏とは99年のTBS深夜ドラマ「コワイ童話」シリーズ(1話30分、4話完結)の「親ゆび姫」以来25年、四半世紀にわたるタッグ。令和の今だからこそ書ける挑戦作に「相当な覚悟が必要だったんじゃないかなと思います」と推し量る。

 「宮藤さんがSNSに対するモヤモヤを度々エッセーに書いているのを読んできましたけど(笑)、今回はもうエッセーで言っている場合じゃない!ドラマで描くんだ!という覚悟なんだと感じました。2人でもネットや週刊誌で取り沙汰されている話題について会話してきましたが、日本社会が昭和から令和へどう変わって、こういう現状になっているのかをドラマの中のキャラクターを通して描こうと。社会的なテーマを扱うことには、相当な覚悟が必要だったと思います」

 アラサー世代を描いた宮藤氏初の社会派ドラマ、16年4月期の日本テレビ「ゆとりですがなにか」から8年。初回(1月26日)、市郎が令和の居酒屋で叫んだ台詞「冗談じゃねえ!こんな未来のために、こんな時代にするために俺たち頑張って働いているわけじゃねえよ!期待して、期待に応えてさ、叱られて、励まされて頑張って、そうやって関わり合って強くなるのが人間じゃねえの」をはじめとした“金言”“名言”が毎回、視聴者の心を揺さぶる。

 「この作品には、不適切な台詞が含まれていますが…」などと「お断りテロップ」を入れながらも、実在の人物などの固有名詞も交える“攻めの笑い”を連発。ただ「台本作りでの宮藤さんは常に冷静だし“常識の範囲”で視聴者の皆さんに刺さるラインがどこなのかを模索しています。こういう作品だからこそ、実は本当の“常識”が求められるし、それを判断されていると感じます。25年前に最初にお会いした時から、締切や約束は絶対守る人。ずっと変わらないですね」と全幅の信頼を置く。

 「テクニカル面、構成や台詞は相変わらず凄い、の一言です。『俺の家の話』(TBS)なら親子と介護、『離婚しようよ』(Netflix、大石静氏と共同脚本)なら夫婦と、家族の物語も多く書いてきた宮藤さんですが、今回は社会風刺が強めに足されています。そして、それを押し付けがましくなく、かつ“面白く”やろうと努力しているのが素晴らしいと思います。『ドント・ルック・アップ』(※2)というブラックコメディーの映画があるんですけど、宮藤さんは『やっぱり社会風刺はこうじゃないと、と思いました』と言っていました。触発された部分もあったのかもしれません」

 第7話「回収しなきゃダメですか?」(3月8日)、市郎は「いつか終わる。ドラマも、人生も。だから、そのギリギリ手前まで、とっ散らかってていいんじゃないかね?最終回が決まってないなんてさ、最高じゃん」。終盤、宮藤氏の筆に期待が高まる。

 (※1)宮藤氏がオリジナル脚本を手掛けた19年のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」の後半(第2部)の主人公・田畑政治の愛称。東京五輪(64年)招致の立役者となった朝日新聞記者。阿部がチャーミングに演じた。

 (※2)21年、Netflix。天文学者(レオナルド・ディカプリオ)と教え子(ジェニファー・ローレンス)は彗星衝突の危機を世界中に伝えようと奔走も、大統領(メリル・ストリープ)をはじめ誰一人として警告に耳を貸そうとしない。第94回アカデミー賞で4部門(作品賞、脚本賞、編集賞、作曲賞)にノミネート。

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