【内田雅也の追球】最多4失策での再認識 投手―野手が助け合う姿勢、強い信頼関係が阪神にはある

2023年09月17日 08:00

野球

【内田雅也の追球】最多4失策での再認識 投手―野手が助け合う姿勢、強い信頼関係が阪神にはある
<広・神>6回、マクブルームの打球で失策を犯す佐藤輝(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神9―3広島 ( 2023年9月16日    マツダ )】 打球が大きくはねて阪神二塁手・中野拓夢の顔面を直撃した。8回裏1死のゴロ、記録はむろん内野安打だ。軽傷のようで、治療を終えた中野は元気に戻った。
 これほどはっきりした不規則バウンドは珍しいが、内野が天然芝と土のマツダスタジアムでは、見た目では分かりづらい小さなバウンドの変化が多い。内野手泣かせのグラウンドである。

 阪神は内野手全員が失策し、今季最多となる4失策(過去3失策2度)が記録された。チーム失策数は78個となり、143試合で85・8個の勘定となる。5年連続リーグ最多失策だった昨年の86個とほぼ同数である。

 ただ、この日も失策絡みの失点を示す非自責点は2点。今季通算で41点とDeNAに次いで少ない。昨年の非自責点52点(リーグ3番目の多さ)よりも改善されている。

 この数字や計算以上に痛恨の失策や敗戦に直結するミスがほとんどないのが今季の特徴である。

 野手がミスをすれば投手が踏ん張る。投手が痛打された打球を野手が好守で救う。投手―野手がたがいに助け合う姿勢がある。この信頼関係を再認識した試合だった。

 この日も1回裏先頭、中野が二ゴロをはじいて出塁を許したが、直後に大竹耕太郎がゴロを打たせ、二ゴロ併殺に仕留めた。大竹は以前「味方がエラーしても、オレが抑えてやるって気持ちにさせてくれるチームメートです」と語っていた。

 この後、安打と四球でピンチを招いたが、今度は中野が一、二塁間の安打性ゴロを飛び込んで刺す美技で救った。

 5回裏は大山悠輔がゴロをはじいた。さらに安打で1死一、二塁となったが、難しい遊ゴロ併殺でしのいだ。

 6回裏は2失策が出たが、救援の桐敷拓馬が後続を切った。失策ではないが、冒頭に書いた内野安打の後も遊直の木浪聖也美技で併殺。失点を防いでいた。

 江夏豊は非自責点が非常に少ない投手だった。阪神時代、ほぼ毎年1けた台だった。何度か紹介したが、著書『エースの資格』(PHP新書)で<エラーをめぐる(野手との)思い出がないような間柄では寂しい>と書いている。

 ミスや失敗こそ、より記憶に残るものだ。今季の優勝を後々振り返ったとき、失敗も懐かしい思い出となっていることだろう。=敬称略=(編集委員)

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