スポニチキャンパス
折尾愛真短大女子硬式野球部
2018年05月24日 05:30
社会
プロ野球阪神のキャンプ地として有名な高知県の安芸市営球場。ここで開催された高知大会で1勝すれば、全日本選手権の出場権を得られた。だがトーナメント初戦で至学館大に2―9、続く順位決定戦も環太平洋大に0―7で夢破れた。創部から、まだ1カ月半。一般企業でサラリーマン経験もある磯部貴一郎監督(46)は「初戦で勝てれば良かったんですけど、これが実力。部としてスタートできて良かったと思いたい」と初めての公式戦を振り返った。
15年4月に折尾愛真高に女子硬式野球部が誕生。大学進学しても“九州で野球を続けたい”という選手の受け皿となるため、短大でも今年4月に創部した。昨年まで高校で指導した磯部監督は「野球を続ける子は先を見越し、中学卒業の段階で東京や大阪に行っていた。今は“九州の大学でも野球ができるんだ!”と知ってもらいたい」と呼びかける。
週2回の全体練習は鞍手町のグラウンドで行い、土曜はオープン戦など遠征が多い。「野球もいいけど、アルバイトもしろ」と指揮官は“野球漬け”の生活を選手に求めない。貴重な学生時代を生かして、さまざま経験を積むことを推奨。遠征費など部費も稼げて一石二鳥だ。
1期生は12人がそろった。初代主将には甲斐仁萌(ひとえ)捕手(1年)が就任。戸畑高では男子と一緒に3年間硬式野球部でプレー。「(自宅から)なるべく近くで野球がしたかった。部活として、しっかり打ち込めると思った」と、この部の門を叩いた。高校で男子と同じ練習をこなした自信を胸に、現在は練習から率先して大きな声を出し、雰囲気を盛り上げる。「うるさくしないと、モチベーションも下がるんで」と頼もしかった。
折尾愛真高女子野球部から加わったのは5人。中尾優花外野手(1年)は「高校のメンバーと野球がしたかった」と思いを明かす。その一方でスポーツ経験が全くない選手もいる。後藤小夏外野手(1年)は「走攻守どれか一つでもいいので、野球をやってきた選手に追いつきたい」と必死に白球を追う。
左右2人が主戦投手を務める。渡辺珠咲(1年)は身長1メートル69の長身右腕だ。自宅でも体幹トレーニングなどに励み「ピンチでも抑えられる投手」を目指す。左腕の野口舞(1年)はロングの茶髪がトレードマークの変化球投手。「流れをつくる投球ができれば」と意気込む。
挑戦は始まったばかりだ。「目標は全国制覇」と甲斐主将は力強い。夢をかなえるために練習あるのみだ。
【槇本コーチ 経験注入、九国大付で09年夏甲子園16強】
若いチームにとって槇本兼磨コーチ(26)の存在は大きい。九州国際大付高で09年夏の甲子園に背番号3で出場し16強に貢献。名古屋商科大では、かつてPL学園を率いて甲子園で春夏計6度の優勝を飾った中村順司監督の下でプレーした。
「勝てるチームにいたという経験は指導に生きてます」
現在、平日午前は整骨院に勤務。午後は北九州市内の学校などを回ってトレーニング、いい状態で練習や試合に臨むための調整方法を指導する。女子野球の魅力に「彼女たちが心の底から野球を楽しんでいると感じる。伸び伸びとやっているところがいい」と話す。
まだノックや体づくりなど基礎練習が多い。作戦面も含めた技術練習は始めたばかり。「バントシフトとか、女子野球でやるチームは少ない。どんどん経験を伝えていきたい」と腕まくりした。
【高校時代も野球部「リー」赤星 つなぎの2番】
赤星莉々奈内野手(1年)は主に三塁や中堅を守る。折尾愛真高野球部出身だ。「高校最後の大会で負けたのが悔しくて、もうちょっと野球がしたかった」と強い思いで入部した。「リー」の愛称を持つ2番打者。打力向上がチームの課題と認識し「塁に出られるようにしたい」とチャンスメークを誓う。
≪ソフトボール出身の宮井「全てが違う…」苦笑≫九産大九州高でソフトボール部主将を務めた宮井杏南(あなん)内野手(1年)は似て非なる競技のギャップに戸惑いながら懸命に励む。「守備の動き方とか、全てが違います」と苦笑いだ。山口の下関短大付高でソフトボールに励んだ上田亜美投手(1年)は「広角に打てるバッターになりたい」と精進を誓った。
▽折尾愛真短期大学 北九州市八幡西区の私立大学。1966年(昭41)に折尾女子経済短大として開校。04年から現校名。経済科のみの単科大で商業、観光ビジネス、経営情報、スポーツマネジメントの各コースを選択できる。