スポニチキャンパス
国際医療福祉大学理学療法学科Para Sports Club
2019年02月28日 05:30
社会
大川市内の体育館。車いすツインバスケットボールチーム、博多パトラッシュの選手が姿を現すと、学生はテキパキとサポート態勢に入る。脊髄を損傷し、その影響が下肢だけでなく上半身にも及んでいる選手は多い。自力で競技用の車いすに乗る、あるいは乗り換えることが難しい。学生はそれを手伝うほか、車いすに空気を入れる、テーピングをするなど練習準備を担う。
理学療法学科では3、4年次に外部で8週間にわたる長期臨床実習を2度経験する。ただ、PSC顧問の下田武良助教によると「脊髄損傷の患者さんの多くは専門の施設に行くので、(実習の)臨床現場ではあまり見ないんです」と話す。障がい者スポーツは日常生活に戻った人が行うもの。そのため「病院から社会に戻ってどういう生活をしているのかを見てほしい」と学生に求めている。
PSCは現在、理学療法学科に籍を置く1~4年の135人で構成され、不定期で活動する。もともと博多パトラッシュのトレーナーだった下田助教はPSCの中にバスケット部門を作った。同部門の約10人は多くがバスケット経験者。一緒に競技用の車いすに乗って練習に参加し、汗を流している。
活動のベースが出来上がったのは14年。JICA(国際協力機構)から「ペルーで障がい者スポーツの普及促進活動」を要請された下田助教は、学科の学生と南米に1カ月間滞在した。同地ではリハビリテーションの一環として障がい者スポーツを取り入れていたものの、スタッフにノウハウがなく、ネット検索で見つけたものをまねする状況だった。そこで下田助教らは講習会を開き、専門的な知識や実践方法を伝えることに努めた。
充実した活動内容に学生の意欲が高まり、翌15年にPSCが発足。もともと国際医療福祉大が資格認定校のため、授業で単位を取得すれば資格は取れる。これを「使える資格にしたくて。胸を張って資格を持っていて使える!という人材を育てたかった」という下田助教の思いもあった。現地での活動は17年まで3年間続け、ペルー政府からも活動を評価されたという。
ほかにも障がい児を対象としたスポーツ教室や各種団体からの依頼に応じてボランティアを派遣しているPSC。ここで学んだ財産を将来、必ず生かす。
≪バスケ経験者の松尾、積極的に≫松尾玲(あきら、2年)は小中、大学でバスケットボール部に所属している。経験者らしく車いすに乗って一緒に汗を流す姿は俊敏に映る。それでも本人は「感覚が違うから難しい」と話す。博多パトラッシュの練習ではサポートも欠かさない。「自分から声をかけて、できることを探します。自分から進んで働くことが大事」。将来の夢はもちろん理学療法士になること。「コミュニケーションを取れる人になりたい」と誓った。
【江原部長 試合見て「迫力に圧倒された」】
部長の江原杏菜(3年)は1年次の12月に車いすバスケットボールの九州大会を観戦し「とにかく迫力に圧倒された」と競技に興味を持った。試合中に激しくぶつかって倒れる選手がいた。それを見た相手チームの選手が車いすを立て直して、助ける姿が今でも目に焼き付いている。「いい試合を見られたなと思った」と振り返る。
江原は中学時代はバスケットボール部。三潴高ではカヌー部に所属し、15年の和歌山国体の個人戦で決勝まで進み全国9位に入った。理学療法学科に進学し、昨年4月に部長に就任。博多パトラッシュの運営を手伝うほか、障がいを持つ子供を対象にする教室の活動内容を企画している。どんな運動、競技が安全かつ興味を持って取り組んでもらえるか。「輪投げ」のやり方一つから、みんなで意見を出し合い、当日は大成功。「凄く勉強になった。周りをよく見て動く大切さを学んだ」という。
競技用の車いすに乗ったこともある。容易に方向転換できるよう、正面から見ればタイヤが「八」の字に配置されており、一般的なものより直進させるのは難しい。また、ブレーキがなく、胸部や腹部をベルトで固定する仕様だ。「普通の車いすと比べてコントロールが難しい。ドリブルするのも大変だった」とプレーヤーの凄さが分かったそうだ。
▽理学療法士 病気、ケガ、加齢などの要因により、身体機能に障がいを持つ人に対し、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復を図るため、運動療法や物理療法(温熱、電気などを治療目的に用いる)を施す。健康な状態に回復し、自立した生活が送れるように支援する医学的リハビリテーションの専門職。
▽国際医療福祉大 大川キャンパスは05年4月に大川市榎津に開設。同キャンパスに福岡保健医療学部があり、理学療法学科、作業療法学科、言語聴覚学科、医学検査学科を専攻できる。隣接するのは506床の高木病院。キャンパス周辺に医療、リハビリテーション、在宅での看護、介護などさまざまな医療福祉サービスを提供するグループ施設がそろい、医療福祉を学ぶ最適な環境が整っている。