【内田雅也の追球】「4番」と「4番目」

2024年06月02日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「4番」と「4番目」
<ロ・神>5回、大山は進塁打となる二ゴロ(撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 【交流戦   阪神2-3ロッテ ( 2024年6月1日    ZOZOマリン )】 連日の悪夢だった。9回裏2死二塁、「あと1球」コールのなか、岩崎優が左越え二塁打を浴び同点となった。
 前夜のハビー・ゲラに続き、クローザーが9回裏に1点リードを守り切れなかった。自分たちで試合の幕を下ろせず、この日も延長でのサヨナラ負けで幕は下りた。

 <貧打が好調だった投手陣に悪影響を及ぼしている>と2日前(5月31日付)の当欄で書いた。あまりに低い得点力に投手陣は重圧と緊張を強いられている。悪影響は信頼すべき2人の「終決者」にも及んでいた。

 同じ原稿で打線てこ入れに「型破り」でどうかとも書いた。この日、6月の衣替えではないが、大幅にオーダーを入れ替えて臨んだ。

 いま最も信頼できる近本光司を初めて4番(阪神109代目)に据え、勝負強い糸原健斗、前夜プロ初本塁打の前川右京と主軸を組ませた。俊足で前夜2年ぶり安打を放った植田海を2番に入れ、機動力を使いたいとの思いは見えた。大山悠輔は7番に下げた。

 確かに型破りで、なりふり構ってはいない。だが、悲しいかな、このオーダーも機能したとは言えなかった。6回表の1点(同点)は2死から植田の内野安打、糸原中前打の後、連続四死球の押し出しで得た。9回表の1点(勝ち越し)は先頭近本が死球で出て二盗。前川が外角変化球を懸命に引っ張って転がした進塁打(一ゴロ)で1死三塁とし、渡辺諒が左犠飛を打ち上げた。

 前川の進塁打は殊勲甲だろう。大山も5回表無死二塁で右方向に押っつけて進塁打(二ゴロ)を転がしている。これも功労なのだが、どうも大山には「4番」としての期待が残り、自分で還す、強い姿勢を見たくなる。

 7番に入れると7番の打撃になってしまうのである。4打数無安打だった。一方、近本は平然と「4番目」として打席に立ち、本来の1番と同じ姿勢で3出塁していた。

 大山が本来の打撃を取り戻したうえで4番に座らねば、優勝などおぼつかない。「4番目」と「4番」は違うのだ。

 もう一つ。不運もあった。失点につながった2本の二塁打はともに“イレギュラー”だった。4回裏の一塁線二塁打は大きく跳ね、9回裏の中前ライナーは“空中イレギュラー”だった。月が変わってもツキは変わらなかった。 =敬称略= (編集委員)

おすすめテーマ

2024年06月02日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム