【内田雅也の追球】悪夢なら早く忘れればいい 岡田監督は前を向く「まだ貯金あるやないか」

2024年06月06日 08:00

野球

【内田雅也の追球】悪夢なら早く忘れればいい 岡田監督は前を向く「まだ貯金あるやないか」
<神・楽> 9回1死一、二塁、島田の併殺打の判定でリプレー検証を要求する岡田監督(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【交流戦   阪神2ー3楽天 ( 2024年6月5日    甲子園 )】 悪夢のような敗戦後、お通夜のような会見を終えた阪神監督・岡田彰布は歩きながら「まだ貯金あります、って誰も言わんかったなあ」と言って少し笑った。「そんな沈みきってしまってどうすんの? まだ貯金あるやろ。借金を10個ほど抱えてるみたいやないか」
 実は監督会見が始まる前、インタビュールームで待機していたトラ番記者に「まだ貯金あるやないか」と話していた。
 練習開始前には阪神園芸甲子園施設部長・金沢健児に「借金7、8個あるチームみたいやけど、それでもまだ貯金あるからね」と話していた。
 最悪、どん底でもまだ貯金は1つ残っている。苦しみながら自分たちでためてきたのだ。
 悪夢とか、痛恨とか、そんな敗戦の後、岡田は時にこうした態度を示す。昨年も悪夢の敗戦後、コーチ室でコーチ陣が沈みきって岡田を待っていた時があった。「おいドアを閉めろ。何を沈んでいるんや!? そんな態度、選手に見せるな!」
 悪夢なら早く忘れればいい。プロは毎日試合がある。朝が来れば、新たな勝負が待つ。やられたらやり返すだけだ。落ち込んでいる暇などない。
 9回表「あと1人」から逆転2ランを浴びた岩崎優もそうだ。1日ロッテ戦(ZOZO)でも「あと1人」から同点打を浴びており、心痛は相当だろうが前を向きたい。
 映画監督・黒澤明は<悲しいことや悩みのある時、「クヨクヨしてても仕方ない、飯食って寝るだ」と、必ず口にした>と長女・黒澤和子が著書『黒澤明「生きる」言葉』(PHPハンドブック)に記している。
 それに岡田の言う「まだ貯金はある」は何も強がりではない。5割を維持していけば、夏場以降に優勝を狙えると踏んでいる。
 岡田の座右の銘「球道一筋」は実家にあった村山実の色紙による。村山が現役や兼任監督時代によく書いた。ただ、監督で復帰した1988年には「辛抱」を書いた。
 大山悠輔を2軍に落とし、佐藤輝明やシェルドン・ノイジーも2軍にいる。極貧打線で昨年の日本一メンバーは崩れ、まさに辛抱の時期にある。
 季節はこの日、二十四節気の芒種(ぼうしゅ)となった。芒(のぎ)はイネ科植物の穂先。田植えの時期である。秋の実りに向け、種をまく時。つまり再スタートの時である。 =敬称略=
 (編集委員)

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