このゆびと~まれ
【第64回】忘れがたき ふるさと
2021年05月17日 05:00
社会
生まれも育ちも地元の方もいれば、故郷(ふるさと)と遠く離れて住んでいる方もいると思います。
今回は深日を離れて兵庫県西宮市で暮らす方の話をしたいと思います。
その80代の男性は、小学5年のときに家族で西宮市に引っ越したそうです。その後、現在まで西宮市に在住なのですが、心のどこかにいつも深日のことがあったそうです。
そして、ある時期から学校とのつながりができました。
毎年、学校のことを気にしてくださり、そのつど学校関係者が電話や手紙で現況を報告し、交流を深めてきました。
離れていても故郷を大切に思い、地域のために何か役に立ちたいと思っている人がいる。
それを子どもたちにも感じてもらおうと思い伝えました。
6年生の子どもたち(現中学1年生)に話したところ、非常に真剣な表情になり、何か恩返しをしようとなりました。
子どもたちは天気のいい日にカメラを持って、深日の昔からあるスポットを撮影することにしました。
担任の先生と相談して、地域のお寺、古い街並み、川など昔と変わっていないと思う場所を探してまわりました。
その写真を印刷し、ポップを子どもたちで考えました。
「今も海はきれいです。昔と変わっていませんか?」
「昔からあるお店です。昔もありましたか?」
「道に咲いていた花です。きれいでしょ。」
どれも温かい言葉が写真とともに語りかけてくれます。
また、幸いに深日小の古い校舎の写真もあり、それらも使って一冊のアルバムを作成し贈りました。
するとたいへん感激され、春休みに思いのこもったお礼の手紙が子どもたちに届きました。
少しでも早く見せてあげたいと思い、中学校の入学式後に小学校に来てもらいました。
子どもたちの家族もいる前で、お礼の手紙を読みました。
子どもたちだけでなく、誰もが真剣に聞いてくれました。
「みんな、ええことしたなあ」
大人たちが喜ぶ顔に、真新しい制服に身を包んだ子どもたちは、とても誇らしそうでした。
さあ、2020年度のお話はここまでです。次号から2021年度のお話が始まります。
このゆびと~まれ。
(長根 わかば)(次回掲載は24日)
【深日(ふけ)】大阪府の最南端、泉南郡岬町にある深日は四国や淡路島への交通の要衝として繁栄した。地区人口は1971年の8059人から、2019年には3766人に減少。深日小学校の児童数も1978年は875人いたが、2019年には74人にまで減少した。大阪市内から電車で約1時間の場所にも、少子高齢化の波が押し寄せている。