「ブギウギ」マイクがない理由 「踊って歌うことを優先」
2024年02月09日 08:15
芸能
「東京ブギウギ」はスズ子のモデルとなった歌手の笠置シヅ子さんが終戦後間もない1947年に世に出した大ヒット曲。作曲は羽鳥善一(草なぎ剛)のモデルとなった服部良一さん、作詞は鈴木勝さんが手がけた。
ドラマでは善一が列車の中で曲を思いつき、喫茶店の紙ナプキンに楽譜を記入、進駐軍の人々をスタジオに招いてレコーディングするというエピソードがあったが、いずれも服部良一さんの実体験に基づいている。
福岡氏は「服部さんの『東京ブギウギ』に関するエピソードは素晴らしい。あのような話は脚本を作る時、なかなか思いつくものではないので、うまくドラマに取り込みたいと思いました」と説明する。
歌唱シーンでは、ステージにスタンドマイクがなく、スズ子は派手に動き回りながら「東京ブギウギ」を歌い踊り続ける。
福岡氏は「笠置さんが最初に『東京ブギウギ』を歌った時はどうだったか分かりませんが、とにかく笠置さんは戦後のステージでめちゃくちゃ動き回って踊りながら歌っていたという話があります。そのように観客との一体感あって前向きで明るいステージこそスズ子らしいと思い、あのシーンでは踊って歌うことを優先しました」と話す。
動きながら歌う人の声を拾う、現代のようなワイヤレス型ヘッドセットマイクは、もちろん、あの時代には存在しない。
福岡氏は「多くの視聴者の方々が質問したくなることだと思いますが、私たちとしては一応、スズ子の声を拾うためのマイクがステージの下にたくさんあるという裏設定でやっています。それでお許しいただきたい」と話す。
何より重要なのは、初回の歌唱シーンに比べ、スズ子を演じる趣里の踊りと歌がより魅力的に見えるところだろう。
福岡氏は「趣里さんはこれまで数々のステージのシーンを撮影して自信もついていると思います。ドラマとともに趣里さんが大きくなっているという感じが印象的です。初回の『東京ブギウギ』も素敵だと思いましたが、今回はフルで歌っているのでとても体力を使ったと思いますし、ほぼ一連で撮影しているので躍動的なステージになって、より素敵になったと思います」と語る。
「東京ブギウギ」は笠置さんの曲の中で最も有名。その曲の完成と披露は物語のひとつのピークとも言えるが、ドラマはさらに続いていく。
福岡氏は「ここから先のエピソードもたくさんあります。スズ子は子育てをしながらステージに立ち、いろんな曲を歌い、いろんな人と出会います」と話す。
今後は「若手スター歌手」として「水城アユミ」という人物(演じるのは吉柳咲良)も登場する。
アユミはスズ子の大ファンで尊敬の念を抱いているという設定だが、どんな歌手で、スズ子とどんな関わり方をするのか興味深い。
◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。