「ふてほど」ネット話題 毎回ミュージカルシーンの狙い「本職起用」「初回プロットに驚き」番組P語る裏側
2024年02月09日 09:00
芸能
宮藤氏がオリジナル脚本を手掛けるヒューマンコメディー。「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツアイ」の阿部&宮藤氏&磯山プロデューサーが「タイガー&ドラゴン」以来19年ぶりにタッグを組んだ。主人公は1986年(昭和61年)から2024年(令和6年)にタイムスリップしてしまう“昭和のダメおやじ”体育教師の小川市郎。彼の“不適切”な言動がコンプライアンスで縛られた令和の人々に考えるヒントを与える。
第1話「頑張れって言っちゃダメですか?」(1月26日)。開始54分、令和の居酒屋。後輩の加賀ちゃん(木下晴香)からハラスメントを訴えられたアプリ開発会社の秋津くん(磯村勇斗)が突如、歌い始める。
「♪話し合いましょう たとえわかりあえなくても」
「♪今年で入社7年目 メンタルとっくに限界です」
他の客たちは「♪炙り〆サバ」の合いの手。加賀ちゃんの先輩・田代(咲妃みゆ)は入社13年目の立場と心情を歌い、同じく先輩の鹿島(菅原永二)が「♪それが組織」と“三角ポーズ”を決める。その後、小川市郎(阿部サダヲ)、加賀ちゃんもミュージカルシーンに加わった。
第2話「一人で抱えちゃダメですか?」(2月2日)。犬島渚(仲里依紗)が勤めるEBSテレビ。「働き方改革」がテーマとなり、市郎が「♪米寿の夜」と口火。渚の夫でフリージャーナリストの谷口龍介(柿澤勇人)は同調圧力について歌い、踊る。渚は退職を撤回し、上司の瓜生(板倉俊之)に8個の要望を訴えた。「♪よっつ、ペーパーレス急がないで」「♪やっつ、やる気を削がないで」――。
初回は突然のミュージカルシーンに驚きの声が上がったものの、「♪それが組織」がクセになる視聴者も。第2話は「ミュージカルシーン、そろそろ?」と期待を集め、歌手・尾崎豊風の「♪米寿の夜」が爆笑、渚の“わがまま”が共感を呼んだ。
今作の企画は22年9月頃から徐々に進め、ミュージカルシーンの話が出たのは23年3月頃。磯山プロデューサーが宮藤氏に持ち掛けると、好感触だった。
「じゃあ、どうしたら面白く歌を入れ込めるか、という打ち合わせになりました。インド映画『RRR』(22年10月公開)などを見て、やはり純粋に『劇中の歌って楽しい!』と思ったのと、阿部さんの歌っている姿がとても素敵なので、皆さんに見てほしいと思ったのです。当初は『テーマを歌う』というところまで考えていなくて、かつて久世光彦さん演出・プロデュースの『ムー』(77年、TBS)などのテレビドラマで突然、郷ひろみさんと樹木希林さんが歌ったりしていたのが『楽しかったなー』くらいのイメージでした」
宮藤氏から届いた初回のプロットには「♪話し合いましょう~」。「『あ、テーマを歌っちゃうんだ!』とビックリしました。でも、確かにこの部分を台詞のやり取りにすると、かなりディベートっぽくなって、何だか硬くなりそうと思っていたので『なるほど』と思いました。それに歌詞をテロップで出せるので、凄く伝わりやすいというメリットを感じました」と振り返り、驚きや感心を明かした。
「もちろん、突然歌いだすことに違和感を覚える方も少なからずいるとは思ったので、チャレンジだとは感じましたが、結論がすぐには出ない問題を扱っていますし、それぞれの立場や考えの歴史もあると思うので、歌にすれば、それぞれの思いを真摯に伝える姿を描けるのではないかと考えています。『やるなら真面目にやらないと』と思って、毎回頑張っています。(ミュージカルシーンに)『何これ!』と笑っていただけるのは、凄くうれしいです」
「大人計画」の阿部を筆頭に、第1話の木下・咲妃・菅原、第2話の柿澤と舞台俳優が出演。咲妃は元宝塚歌劇団雪組トップ娘役。木下は「ロミオ&ジュリエット」「モーツァルト!」「プロデューサーズ」、柿澤は「スリル・ミー」「デスノート The musical」「スクール・オブ・ロック」など数々のミュージカル作品を彩る。
ゲストは「『歌って踊っているところを見たい方々』を頑張ってキャスティングしています。ミュージカルスターの方々とドラマでご一緒することがあまりないので、新鮮です」。振付の八反田リコ氏とはプロデュース作「うぬぼれ刑事」「離婚しようよ」などでもタッグ。「まず歌詞を体で表現してくださる。そして、面白くてポップでカッコよくて印象に残る振付をしてくださるので、大好きです」と絶大な信頼を寄せている。
ミュージカル作曲担当のMAYUKO氏は「逃げるは恥だが役に立つ」「監獄のお姫さま」などの劇伴も。「ご本人が大のミュージカルファンということで、今回は劇中の楽曲を全曲、作曲(作詞はすべて宮藤氏)していただき、演者さんたちの歌唱録音のディレクションをすべてお任せしています。演者の皆さんは歌唱録音、振付練習、リハーサル、本番と普通のドラマよりいろいろな手間と時間がかかるこの試みに前向きに参加してくださっていて、おかげで楽しいミュージカルシーンになっていると思います」と裏側を語った。
磯村と仲の舞台出演は多くないものの「磯村さんが一番たくさん練習されていました。ボイストレーナーを付けて、事前にスタジオにこもって数回トレーニングしてから参加されていました。とにかく真面目です。仲さんも本番はトレーナーさんに付いてもらいましたが、基本的には家で練習してくださって、いつもかなりの完成度で臨まれています。ダンスはすぐに覚えて、そこにさらに色気や楽しさを足してくださるので、見ていて目が離せないです」と絶賛した。
9日は第3話「カワイイって言っちゃダメですか?」。山本耕史、2話連続のゲスト・八嶋智人によるミュージカルシーンに期待が高まる。