フィッシングニュース
“多摩川最後の漁師”に学ぶ投網の世界 隠れた名作の境地に挑んでみました 都会で兼業営む山崎愛柚香さん
2024年10月31日 04:30
社会
山崎愛柚香(あゆか)さん(31)は、川崎市に住む“都会の漁師”。3年前に62歳で他界した充哲さんの後を継いだ。「父の時点で“最後の”と言われてました」という。地域の人たちに多摩川の生き物に親しんでもらおうと移動水族園なども営む「兼業漁師」を自称する。
今回のポイントは多摩川西岸、三沢川の合流点付近。まずは河川敷で網の投げ方を習う。円すい状の網は、その頂点側から伸びる手縄を左手にくくりつけ、オモリの付いた円状の開口部を魚に向かって投げるイメージだ。まずは網を畳んで左右の手に持ち、狙った方向に半身で構える。右利きの記者は右肩が前になる。オモリの反動を利用し、前へ小さく、後ろへ大きく振り、再び前へ放り投げる。
…と書けば簡単に思えるが、まず網の畳み方が難しい。投げて開くように持つため、左肘を張って肩に掛け、そこから垂れ下がった網のひだから右手に1枚取り、右手も網がひだをつくるようにまとめていく…と書いてもよく分からない手順が幾つもあり、最初は構えに入る前に一苦労だ。
小一時間の練習で何となく網が開くようになり、川へ下りる。小魚が水面を叩く小さな波紋が無数に見えた。この日の本命オイカワだ。「私の3歩先に出てすぐ網を打てる体勢を取ってください」。指示に従い網を構えて待つ。記者には全く見えないが山崎さんには魚の群れが見えている。
高度成長期に、生活排水や工場排水にまみれた印象の多摩川だが、今は「世界トップレベルの下水施設のおかげでかなり奇麗になった」といい、実は天然アユが大量に遡上(そじょう)するまでになっている。汚れた都会の川というイメージは割り引いて接する必要がありそうだ。
「あ。来るかな。行きましょう。はい、前…後ろ…はい投げて!」。山崎さんの掛け声に合わせて網を打つ。いまいち広がらなかったが、1匹くらい入ってるだろう…と思ったがノーフィッシュ。「いたけど逃げちゃいました」と山崎さん。網は投げたら素早く引くのも重要。網目を絞らないと、わずかな隙間から魚は逃げていく。たぐり寄せる際、重りが川底を離れるのも逃げる隙を与えることになる。小魚の目と運動神経は想像以上に良い。
2投目もオデコ。網は思うように広がらないが、それより魚の動きに合わせ打ててないのだろう。3投目でようやくヌマチチブ1匹を拝むことができた。